先日、「突出した才能の子に学習支援」という記事について書いた折に、支援方法について思うところあったので記録。
取り出し型かインクルーシブ型か
ギフテッド教育という括りの中で、その方法がざっくりと「取り出し型」と「インクルーシブ型」に分けられることがある。
取り出し型は、誰もが一般的にイメージする「ギフテッド教育」だと思うのだが、能力の高い子たちを別室に集め、通常とは異なる形の学びをさせるタイプ。
これまで先進国の多くでは、取り出し型のギフテッド教育がメインとされてきた。
インクルーシブ型は、能力別に子どもを分けることなく通常学級の中で行う。
探求学習を取り入れることでそれぞれの深さに合わせたり、協働学習でそれぞれの得意不得意を組み合わせたり、ICT活用で進度習熟度別の個人学習を進めたり、など。
世界全体のトレンドとしては、取り出し型ではなくインクルーシブ型に向かっていると感じている。
北欧やアメリカも、今はインクルーシブ型へと方向転換している印象だ。
それは、素晴らしいと思う。
それが可能ならダイバーシティ万歳!と心から思うし、人種・性別・ニューロ的、全てにおいてのダイバーシティが受容されている社会であれば、そこを目指すべきだろう。
ただ、まだまだダイバーシティーを学んでいる現代社会(とりわけ日本)においては、取り出し型がより良く働くケースも多いのではないかなと感じることもある。
取り出し型のワンデースクールに通わせてみて
長男は今学期より、ワンデースクールに通っている。
週に1日、学校を休んで塾に通うのだ。
(詳細はこちらの記事にて)
今学期から通い始めたので、まだ3回しか行っていないのだが、初日から本人は瞳を輝かして帰ってきた。とにかく楽しかったと。
こちらの記事(ワンデースクールでマスキングをしなくなった長男)に書いたように、ワンデースクールではマスキングをしなくなったのが、いかに彼が彼らしくいられているのかを象徴している。
通わせてよかったなと思う点は主に次の4点。
- 学びのチャレンジがある
- 似ている子どもに会える
- 少人数のため安心しやすい
- 理解ある先生のもと、合理的配慮が得られる
これらは、インクルーシブだったら得られなかったものだ。
詳しく書くと…
学びのチャレンジがある
アカデミックなことに情熱を持っているわけではない長男だが、やはり学びは大好き。
ワンデースクールでは「できる喜びとチャレンジする喜びの両方が得られるように、80%できるレベルの問題を出します」というポリシーだそうで、先生が様子を見ながらレベル設定をしてくれる。
「ちょっとだけ難しくて楽しかった!」
と本当に言っているので(笑)、
確かにちょうど8割くらいできているんじゃないかな、と思っている。
似ている子どもに会える
発達凹凸があり、社会性に不安のある長男。
新しい場所でお友達できるかなと心配していたが、まるで杞憂だったようで、初日からお友達できた!と真っ赤なほっぺで教えてくれた。
講師に「He was like a social butterfly!」と言わしめるほどで、3週通った今は、クラスの男子5人、全員仲良しらしい。
長男は今ポケモンカードに深くハマっているのだが、この男子たちは全員ポケモン大好きで、先生が「好きなポケモン20匹をアルファベット順に並べてリストを作って」と課題を出してくれたりと、共通の話題で盛り上がっている様子。
毎週、宝物のポケモン図鑑を大事そうにバックパックに入れて持参している。
学校の友達の中にはひとりもポケモンフレンドがいないので、ここにこれだけ集まっていると言うことは、何か共通するものがあるのだろうな、としみじみと思う。
(あと、関係ないかもしれないが、男子5人中4人が長髪だ。感覚過敏で散髪が苦手だから?)
と共に、本人がここまで夢中になっているのに(ポケモンにハマった詳細はこちらの記事)、それを分け合う相手がいないのは、本人もつまらないだろうし、困ったもんだと思っていたので、ポケモン友達ができて、本当に本当に嬉しい!
やはり、似たような子供が集まるって言うのは、居心地良いだろうなと大人の身になったとしても思う。
少人数のため安心しやすい
ワンデースクールのクラスは、男子5人、女子2人の合計7人だ。
(この人数比を見て「女の子は全力で擬態するからね…」と思うニューロダイバース保護者は多いだろう)
妙なところで完璧主義なところがある長男、普段、1クラスに30人近くいる学校のクラスでは、変なこと言わないか、変な行動取らないか、おそらくドキドキ頑張ってるんだと思う。
それに比べ、7人という少人数だと「マジョリティー」というものが存在しにくいだろうし、全員と近しい関係になりやすいし、安心するんだと思う。
また、感覚過敏から考えても、「教室のざわめき」「視界に入ってくる色や動き」などが抑えられるから少しは楽だろう。
小学校選びの時に、規模が小さい学校と大きい学校で悩み、校庭が広くてのびのびしているのが決め手になって大きい学校を選んだのだが、小さい学校の方が合っていたかもな、と、今は思うし、次はできれば規模の小さめの学校に入れてあげたいなとも思う。
(ま、本人が楽しんでいるから結果オーライだけど)
理解ある先生のもと、合理的配慮が得られる
これは大きいと思う。
このコースは「ニューロダイバース」に向いていますよと謳われているのだが、ギフテッド教育専門ではない。
2Eではなく、学習障害、ADHD、ASDなど発達障害のみの子もいると思う。
いずれにせよ、受験があるわけでもないこの国で、決して安くはないワンデースクールに子どもを送り込むということは、何か無視できない困りごとを抱えているのは確かだろう。
つまり、先生もニューロダイバース児の扱いについて知識なり経験を持っているということだ。
先生にははじめから感覚過敏や感覚探求について話してあり、必要なら配慮しますねと言ってもらっていたが、実際に配慮してもらっているのだと思う。うちの子も、他の子供も。
だからこそ、マスキング(擬態)の必要を感じなくなったのだ。
また、ニューロダイバースな子が多いからこそ、授業の形も工夫されていて、例えばSTEAMは基本的に手を使って実験やクラフトなどの作業をメインにしている。文字を大量に読んだり書いたり、覚えるために分かっていることを繰り返すような勉強法はしない。
そういったシステムも、不要な努力(頑張れば出来るけどやると疲れる)での疲弊を減らしてくれているのだろう。
週に1日の良さ
「週に1日学校の代わりに行く」というのが、うちの子にはすごくちょうど良いと感じている。
放課後でもなく、週末でもなく、学校の代わり、というのがポイントだ。
その良さには2つあって。
ひとつ目は、他の4日は普通の学校で普通の子たちと触れ合えること。
似ている子が集まる環境は心地よいとは思うものの、長男の場合は学校も楽しく通えている。
仲の良い友達もできたし、季節の行事もあれこれと楽しみにしている。
学業はともかくとして、社会性や多様性を学ぶのに、公立小学校に勝る場所はないのではないだろうか。
(もちろん、そこで馴染めずに魂を削るような状況になってなければ、の話だけど)
2つ目は、学校を休んでいくことで、放課後の時間は自分のものになる、というところだ。
もうすぐ帰国するにあたり、学校選びが難航している。というか、もはや何がなんだか…。
オルタナティブスクールの良さそうなところは、定員一杯だったり、車嫌い(車酔いが激しい)な長男と暮らすのはきついと思われるような地方だったり。
自由な校風の私立一条校では?と思ったけれど、途中転入って、そんな簡単なものではなかった。(当然?)
であれば、今のように公立校に通わせつつワンデースクールは?と思ったが、ワンデースクール的なものは存在しないのか、あるのはアフタースクールの活動ばかり。
自治体の放課後デイサービスも、理解のあるところはありそうだが、あくまでも放課後。
ロボット教室、クラフト教室、STEAM教室、などなど、好きそうな習い事があっても、当然放課後もしくは週末の想定。
みんな、学校終わってからこんな色々やってるの?
日本の小学生、みんなすごいエネルギーだなあ!
現在、学校が終わるのが3時、ちょっと外で体を動かしがてら、ぶらぶらと歩いて帰宅してオヤツ食べたらもう4時。7時半過ぎにはベッドに向かうので、その間3時間半しかない。
ご飯やお風呂で1時間は取られると思うと、自分の時間って2時間半じゃないか!
ポケモンカードゲームしたいし、パパと鬼ごっこもするし、ベイブレードもちょっとやっておきたいし、レゴもやりたいし。
時間なくない???
学校で、刺激に耐えて、感覚探求を抑えて、脳をフル回転させて帰ってくるから、自宅という安心な環境で自分を取り戻す(ソファからソファへ飛び回ったり、ポケカに没頭したり)時間が、長男には必要に思える。
なので、学校の1日と代替することで、放課後の自分の時間を奪うことなく、学びと配慮の経験が得られるのは、ものすごく合理的だと思うのだ。
日本でもこういうサービスを誰かやってほしいなあ。
情緒支援級や不登校児のための別室とかが、少しずつ広がってきていると聞くが、それとはなんかちょっと違うような気がしている。
どうなんだろ?
インクルーシブも良いけれど
「妬み」という感情や、「公平」に対するちょっと歪んだ頑なさなど、日本の社会において、取り出し型の才能児(という呼び方が合ってるかは別として)教育は合わないだろうと思われる理由は、理解できる。
「突出した才能の子に学習支援」記事が出た時に「取り出しはちょっとどうなの?」と不安視する声も聞いた。
ただ、取り出し型にしかない良さがあるのも確かだ。
個人的には、できるだけたくさんの選択肢を用意して欲しいな、というのが本音だ。
「どちらが良いのか?」の議論ではなく、「どうやったら両方を用意することができるのか?」を議論してほしい。
インクルーシブ型が合う子、取り出し型が合う子、絶対に両方いるのだから、本人が合う方を選べる学校に、いずれはなっていって欲しいと願う。
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