発達障害グレーゾーンだと思っていた長男が、ニュージーランドで「ギフテッド疑い」と言われた。
まだ6歳だから正式な診断には早いと言われつつも、医師からは
・ギフテッド教育についてリサーチすること
・同じようなギフテッド児を持つ家族ぐるみの仲間を見つけること
を、強く勧められた。
そういうわけで色々と調べているところなので、現時点で見つけた情報をまとめておこうと思う。
NZは、ギフテッド教育先進国?
リサーチしようと思って、まず手始めに読んだ本が、こちらの「才能はみだしっ子の育て方 」だった(Kindle版があるため、海外でもすぐに入手できた有難い!)のだが、そこでニュージーランドがギフテッド教育ではかなり日本の先をいくことを初めて知り、驚いた。
では、ニュージーランドではギフテッド児をどう捉え、その上で、どのようなサポートを推進しているのだろうか。
ニュージーランド独特の、大らかで温かい目線のギフテッド教育というものを、私は感じるのだが、そこを語り始めると熱く長くなりそうなので、とりあえずこの記事では、国ぐるみの取り組みと、メジャーな団体を一通り列挙していこうと思う。
Ministry of Education (文科省)
そもそも「ギフテッド」というものに、世界的なスタンダードとなる定義はなく、適切な教育やサポートを提供するために、世界中それぞれの国や州にて独自の基準を設けているのが現状だ。
そんな中、ニュージーランドのMinistry of Education(日本で言う文科省?)のホームページには、ギフテッド児へのサポートというページがちゃんとあり、次にあげる項目が、サポートとして明記されている。
・年に2回のギフテッド・ラーナーズ・アワードの設定
(個人もしくはグループでの応募可能。エリアも内容も自由。選ばれると1年間、才能を伸ばすために必要なプロジェクトへの経済的支援がしてもらえる)
・ギフテッドラーナーのための様々なイベントを提供
・ギフテッド児を発掘、サポートするため、教師たちへのガイダンスを提供
・ギフテッド児が、他のギフテッド児たちと共に学べる環境をサポートするために、オンラインでのサポートの提供
・New Zealand Centre for Gifted Educationが提供する、週1日ペースで開催されるプログラム MInd Plusをサポート
また、ギフテッド児というのは様々な要素を持つもので、どんな家庭、どんなクラスにも存在し得るということが書かれている。
そして、もしも自分の子どもがギフテッドかもしれないと思ったらこちらを見るようにという、TKI(後述)へのリンクが。
0-6歳のギフテッド児(英語)
5-12歳のギフテッド児(英語)
TKIとは
上記のリンク先になっているのは TKI (Te Kete Ipurangi) というサイトで、Ministory of Educationが運営する、教育のポータルサイトだ。
Te Kete Ipurangi とは、直訳すると「オンラインの知識のバスケット」(the online knowledge basket )だそうで、およそこの国の教育に関することは、ほとんど全てが網羅されていると言って良いだろう。
保護者、教育関係者向けに、学校の情報、カリキュラム、年間スケジュールや特別なイベントやコンペなど、あらゆる情報が集まっているようだ。
もちろん、上記のリンク先を含め、ギフテッド教育についてのページがある。
こちらも情報いっぱいなので、詳細はまた別の記事で改めて。
政府の運営するサイトに、これだけの量のギフテッド教育の情報があるところに、政府の力の入れようが垣間見れるというものだろう。
GATEプログラム
公立も含め、多くの学校が、スクールホームページにてGATEの存在を謳っている。
GATEとはGifted And Talented Educationの略で、ギフテッド・タレンテッドの生徒のために、必要なサポートや配慮をする準備があるということだ。
内容は学校それぞれだと思うのだが、我が家の長男が通う学校にも、もれなくGATEの存在が明記されている。
我が家の場合は、
1)まだ正式診断に至っていない
2)既に学力に合わせて参加クラスが考慮されている(こちらの記事)
3)学校では特性を隠しているらしいので、問題行動は今のところない
等の理由で、まだ学校には相談していない。
繊細な部分が多い点については、入学時にさらりとは伝えてあるので、いずれ正式な診断が出た時点で、改めて担任への相談という形になるかと思う。
どういう手順で伝え、どのようなサポートが受けられるのか、また判明したら記事にしたい。
NZ Centre for Gifted Education
NZCGE (NZ Centre for Gifted Education) とは、ギフテッド教育を実際に運営しているNPO団体だ。
政府のホームページにも言及されていたMind Plus というプログラムや、もっと小さい子のためのSmall Poppiesというプログラム、GOと呼ばれるオンラインプログラムなどを提供している。
とりわけ、1day schoolとも呼ばれるMind Plusプログラムは、ギフテッド児の保護者たちが(FBページで)絶賛していた。
いずれMind Plusに関しても掘り下げた記事を書きたいのだが、週に1日、全国に14箇所ある地域の開催校に集まり、様々なエリアの専門家を招いて、自主的かつ高度な学びを提供しているプログラムだそう。1day schoolと呼ばれているので、放課後プログラムではなく、在籍校の通常クラスを休んで終日参加しているものと思う。聞いただけでワクワクするではないか!
歳の近いギフテッド児たちが毎週集まることで、孤独感を感じやすいギフ児が仲間を見つけやすい。
専門家から高度な学びを得ることで、彼らの好奇心でいっぱいの脳が満たされハッピーになる。
OE特性や2Eの特性に詳しい心理社会的メンターが見守ってくれることで、特性ありでも安心して参加できる環境が保証される。
聞いただけでもこれだけの恩恵が思いつく。
こういったプログラムが、学校システムごと巻き込んで催行されていることの意義は、大きいと思う。
NZ Association for Gifted Children
NZAGC (NZ Association for Gifted Children)もまた、ギフテッド教育のためのNPO団体だ。
through National Council と書いてあるので、前のNZCGE が内閣政府系の団体だとしたら、こちらは地方自治体から助成されている団体と思われる。
彼らは、
・ギフテッド教育に関するオンラインマガジンを隔月で発行
・教師・保護者・生徒向けのワークショップを主催
・ギフテッド教育に関わる人々が参加できるオンラインフォーラムの運営
・ギフテッド児に関わる、保護者や教育関係者の中では有名なフェイスブックページ「 New Zealand Association for Gifted Children Facebook page」の運営
などをしている。
このフェイスブックページは私も参加しているのだが、専門的なことから日常の些細なことまで、様々な質問があって興味深い。また、NZAGCのボードメンバーにもなっている専門家が回答してくれることもあり、読んでいるだけでも勉強になる。
(こちらのフェイスブックページへの参加は、申請が許可される必要あり。基本的にはNZ在住者もしくは国外在住のニュージーランド人のみのコミュニティー。)
また、関連書籍の貸し出しや、新しいエリアでの支部設立のサポートなどもしていて、NZCGEよりもより地方に根付いた活動がされている印象を持った。
giftEDnz
giftEDnzは、ホームページだけではちょっと分かりにくいのだが、ギフテッド教育に関わる専門家のためのポータルサイトという意味合いが大きいようだ。
教育者、教育心理学者、作業療法士などの専門家が、情報交換をしたり、研究を発表しあったりしている様子。
しかし、ギフテッドラーナーとしてのメンバー登録も可能なので、コンテンツなども提供しているのかな。が、ギフテッド教育のコンテンツそのものというよりは、ギフテッドとは?ギフテッド教育とは?という部分に主眼が置かれていると思う。
私自身もそうなのだが、
「今、自分の子供に何が必要なのか。何がしてあげられるのか。」
という部分はもちろんなのだが、もう純粋に
「ギフテッド児の頭の中ってどうなってるの?どんな仕組みなの?他のギフテッドちゃんたちはどんな感じ?定型発達だったらどう違うの?そもそもギフテッドって何何何????」
という、疑問と好奇心でいっぱいになってしまう。
ギフママの皆さん、そうじゃないですか???
私はそうです。
という、私みたいな保護者にとっては、ここから発信される情報もすっごく興味がある。
会員制になっていて、団体としての登録(学校とかクリニックとか?年会費75ドル)と別に、個人としての登録(保護者かな。年間50ドル)、生徒としての登録(当事者。年間30ドル)があるので、正式なギフテッド判定出てなくても登録できるなら、してみたいなと思った。
AGE school (ギフテッド専門校)
こちらは私立校になるのだが、2018年に開校したばかりの、ギフテッド児だけを集めた学校だ。
ホームページを見ているだけで楽しさが伝わってくるような素晴らしい環境、素晴らしい哲学。
しかし、クオリティを保つため、全14学年で生徒数150名という超少数スクール。
入学は難しいかもしれない。
(あと、私立なのでお値段もそれなりだ。ぐすん。)
Age School HPより
Green School
こちらのGreen Schoolは、特にギフテッドのための学校と謳われているわけではないが、どう考えてもギフテッドにピッタリだろう、というコンセプトの学校。
1校目はバリ島にあるのだが、自然との調和、子供たちの力を信じて、学びを追求する姿に心動かされた親たちが、世界中から集まって来て、自分の子どもをGreen Schoolに通わせているという、話題の学校だった。
その2校目が、ここニュージーランドにオープンすると聞いた時は、運命かもとさえ思ったものだった(大袈裟)。
ただ、広大な自然を確保するためであろう、学校が結構不便な場所にあり、「親の私たちが住めるだろうかという不安」と、「やはり私立で人気校なりの、高額な授業料」(だがそれだけの価値はあると思える設備!払えるなら!)で、今のところ行く予定はない。
(しかしこちらにいる間に、せめて学校見学だけでも行きたいと、ずっと狙っている)
Green School HPより
日本の人口はNZの25倍
人間よりも羊が多い国、とは、ニュージーランドに対してよく言われるジョークだが、日本の人口はまさにニュージーランドの25倍。ニュージーランドは、本当に人口の少ない小さな国なのだ。
それにも関わらず、これだけギフテッドへの配慮がされているのは、「才能を伸ばして国を代表する人材を作ろう!」と言う意気込みよりも、「どんな形であれ、学校に適応しづらい子を取りこぼさない」と言う温かいポリシーから来ていると、強く感じる。
天才性ばかりが取り沙汰されがちなギフテッド児だが、多くの子達がその特性に振り回されて生きづらさを感じており、親もまた、育てづらさに苦しんでいる、ということが、調べれば調べるほど分かってきてせつない。
そこをなんとか掬いとろうと大らかに試行錯誤しているニュージーランドという国に、今このタイミングで引っ越してきたのは、おそらくラッキーなのだと思う。
そしてまたこのタイミングで、日本の政府も「ギフテッド教育に関する有識者会議」をスタートさせたところだ。
これからニュージーランドが、日本が、どんな方向に進んでいくのかは分からないが、もうしばらくこの国のギフテッド教育を調べ、発信して、(自分を含め)方向性を探っている誰か知らない方の参考になれば嬉しいなあと、思う。
また近々、上記にあげた様々な機関やプログラム、学校について、ひとつずつ深掘りしてレポートする予定です!