感覚過敏のお子様をお持ちの保護者の方々。
とりわけ幼児期だと、歯医者に連れていくの憂鬱ではないだろうか?
我家はめっちゃ憂鬱です。
眼科でも耳鼻科でも、お医者さんがそおっと触ろうとしただけで、泣く、叫ぶ、暴れる、噛む。病院の人に対して恥ずかしいやら、怯えている息子が可哀想やらで、へとへとになるので、いつも病院に行く時は夫婦で押し付け合いになる…。(ひどい)
しかし長男5歳のある日、とうとう邪悪な空気を纏ったうす茶色いものを口内に見つけてしまい、意を決して歯医者探しをした結果、素晴らしい歯医者さんを発見したというお話。
ちなみに、ニュージーランドにきてからはまだ連れて行ってなくて、東京に住んでいた時のことです。
東京で、同じようなお子さんを抱える方の参考になれば。
体を押さえるためにバスタオルを持参してください
そもそも歯医者云々の前に、日々の歯磨きに悩んでいた。
とにかく歯磨きの間じっと出来ない。口を開け続けるのもそうだし、手やら足やらが常にクネクネと動き、気づけば必死に口の中を覗き込んでいる私の顔を、足でキックときたもんだ。
こんな子を連れて歯医者なんて嫌な予感しかしないので、なんとか虫歯にならないようにと神様に必死に祈るのだが、如何せんじっとしてくれないから歯磨きだって満足いくまで出来た試しもなく、当然の結果として、ある日虫歯を発見することになった。願い虚しく。
がっくりと肩を落としつつ、いつまでも見ないふりをするわけにも行かないので、近所のキッズデンタルを予約した。
子ども専用の歯医者さんで、いかにも!とばかりに装飾された色鮮やかなクリニック入口、ふんだんにおもちゃが用意された待合室、アニメが流されている大きなスクリーン。ここならもしや…と期待高まる。
当時4歳でそれなりに力もついていた息子は、私の力では押さえきれないので夫に連れて行ってもらい(イェイ!)、ソワソワしながら自宅で次男と二人で待っていたのだが、あっという間にあっけなく帰宅。聞けば、本日は確認だけだったという。がっくり。
私たちの気づいてないところも含めると、なんと4箇所(!)に虫歯があり、麻酔をして治療をするので、提携の小児科医のところに行き、麻酔アレルギーがないか確認して証明書をもらってきてほしいとのこと。
(後に、「確認したいですか?」を、「してきてください」と聞き間違えたかもと、夫の告白があったので、必須ではないのかも)
そして、長男の感覚過敏のこと、もしかしたら泣き喚くかもしれないことを伝えると、「どうしてもじっと出来ない場合、体を押さえての治療になるかもしれないので、ぐるぐる巻きにできるようにバスタオルを持参してください」とのこと。
驚いたよね。
そうなんだ!!!!!
バスタオルでぐるぐる巻き!キッズ専門院なのに????
まあでも、自分も子供の頃泣き喚くのを押さえつけられて治療したような記憶。そんなもんかも、ぐすん。
と思ったのは私だけだったようで。
夫はかなりご立腹。
「ありえない!絶対ありえない!そんなことしたらトラウマ確実だよ。これから一生歯医者さん嫌いになるし、その後親の僕たちだってますます大変じゃないか!」
普段は私の友人知人から「神」と呼ばれるほどに温厚で愛情溢れる夫が、こんなに憤るのも珍しいね、というくらいの震えっぷりだった。
文化の違いかしら〜と思いつつ、まあもっと良い方法があるなら探してくれたらそれに越したことはないので、対応をお任せすることに。
笑気ガスを使用する歯医者さん
外国人の彼にとって日本での歯医者さんリサーチは決して楽ではないと思うが、さすが在住15年。あれこれ調べて、まずは笑気ガスを使用してくれる歯科を見つけてきた。
しかしここも問い合わせると、5歳児にはあまりおすすめしないこと。もしも暴れる場合は治療途中でも中断して大学病院に紹介し、全身麻酔にて治療になること。が、5歳児の全身麻酔もおすすめしないので、できれば親御さんが体を押さえられるならそれをお勧めするとのこと。
どうやら、日本の歯科医では、子供は体を押さえつけて治療するのがスタンダードの様子。
確かに自分の子供の時を思えばそんなだった記憶があるけど、これだけ科学技術が進歩しても、変わらないんだなーと寧ろ感心。
あと、実際の痛みや感覚もさることながら、息子の場合は未知の体験への心理的恐怖心も人一倍強いので、笑気ガスごときでヘラヘラ〜と楽しく治療できるとは、とても思えない。
というわけで、今度は東京在住の外国人掲示板に質問を書き込むことにしたらしい。
理想の歯医者さんに出会えた!
とてもたくさんの親切な人々が、お勧めの歯医者さんを紹介してくれたのだが、中でも私たちが心惹かれたのが、池尻大橋にあるデンタルオフィス・クロスエアタワー。
確か、教えてくださった方の息子さんも超怖がりで、感覚過敏もあったのだが、あちこちと歯医者ジプシーをした結果、やっとここで落ち着いたとのこと。
早速電話で予約を取り、連れて行ってみた。最悪のケースを想定し、大好きなYoutubeのビデオをダウンロードしたスマホや、音が気になるならとイヤフォンやら、考えうる限りの小道具を用意し、名前を呼ばれたところで歯医者さんに感覚過敏など説明しようとする前に「親御さんはいないほうが良いと思うので、ここで。終わったらお呼びしますから。」とサクサクと追い出され、息子は先生と個室へ。
残された夫は呆然。
これまで必ず「泣かないようにそばについていてください」「動いたら危ないので押さえる用意をしておいてください」と言われていたのに、部屋にも入れてもらえなかった!!
そしてしばらく経つと、息子ニコニコで出てきたそうな。
え????夫、また呆然。
その後息子に聞いた話によると、ずらりと並んだ器具は全て、まず目で見て、「ここから水が出るよ」とか「これで水分を吸い込むんだよ」とか、何をするものか説明して、さらに手のひらにあてて動かして見て、怖くないよと確認をしてから、口の中に入れてくれたらしい。
「全部のツールを使ったんだよ!口の中がこちょこちょってして、面白かったよ!」
と、意気揚々の息子。
確かに、ロボット大好きで「将来やメカニックになるのも良いなあ。うしし。」という息子にとっては、それは楽しいだろう!
すごい!!すごすぎる!!
先生からは
「長男君は頭の良い子だから、説明さえちゃんとすればじっとして治療できるので、全然大丈夫ですよ。ご両親いないほうが集中してくれるのでやりやすいです。」
と言われたそう。
しかも、虫歯になりかけが一つあったのでちょっとだけ表面を磨いて、あとは歯の凸凹が大きくて虫歯になりやすそうなところを少し埋めておきました。大きく削る必要のある箇所はありません、とのこと。え?他の3つは???と聞いても、歯医者さんも「???」
前に言われたことと違いすぎて、びっくりだった。確かに、薄茶色だったところも、磨いただけでなくなっている。
半信半疑ながらペコペコと頭を下げて帰り、その後心配性になって3ヶ月おきにチェックに連れて行っていたが、再発することもなく今現在、ニュージーランドで元気にやっている。
歯医者さんによって全然対応違うなーと思ったお話。
歯医者って、どこに行っても同じな気がしていたから、ついつい家から一番近いところに行っていたけど、選ぶの大切…としみじみ思った。
ちなみに、施術は確か当時の院長先生だったと思うのだけど、背が低め髪長めのキリッとしたイケメン先生だった。よく喋るタイプでもないし、大人には愛想が良いとは言えない、そっけない感じの先生だけど、子供には本当に丁寧に接してくれる素晴らしい先生だったので、親への愛想とかもう本当にどうでも良い。感謝しかない。
(褒めてます褒めてます褒めてます!お名前忘れてしまっていて、すみません!)
怖がりすぎる息子を見る母の気持ちってこんなだよ
怖がりの息子、現実的に考えてどこまでも困りすぎるし、ほとほとうんざりするんだけど、でも本当は、怯えて泣いている子どもを見るのが、親として一番辛くて悲しくて胸がギュッと痛いんだよ。
大きな体の大人たちに、よってたかって体を押さえられて、口の中に嫌な音がする硬くて尖ったものが入ってきて、頭蓋骨にズンズン思い振動が響くなんて、考えただけでホラーだよ。パニックになるよ。
どんな気持ちでいるか、真剣に考えたら私が号泣しちゃうから、考えないようにして、本当に困りものでぷんぷん、なんてふりしちゃうくらい、私も嫌なんだよ。
だから、先生自身の大切な時間を、治療そのものだけではなく、子どもを安心させ、これからのその子の人生で「歯医者さん大好き!」にするために使ってくれる歯医者さんがいたら、その子の歯の健康一生分に対する感謝を捧げても良いくらいだと思っている。
感覚過敏でお困りの親御さんの、参考になれば幸いです。